ゆえん
Ⅲ-Ⅴ
この日の夜から、冬真さんとマユと私の共同生活が始まった。
冬真さんは自宅に着くと、空いている部屋を一つ私たちに提供してくれた。
部屋にはクローゼットがあって、そこに私の荷物を入れてよいと言われた。
持ってきたものを片付けていると、まるでこれから冬真さんとの同棲生活を始めるかのように、心が浮足立った。
その横でマユが私の右足を引っ張る。
そうだった。
同棲生活ではなく、共同生活であった。
しかも三人での。
「お風呂にお湯を入れておいたから、マユと二人で入ってきて」
「あ、はい」
そう、私はこの家で全てマユと行動を共にするということなのだ。
もし、マユが女の子ではなく、男の子だったら、冬真さんは自分一人で世話をしたに違いない。
そう確信できた。
彼はかつて子供の父親でもあったのだ。
あれだけよく気が付く人ならば、一人でも十分に子供の世話ができるだろう。
五年前に亡くなった妻と子供は、本当に幸せな生活を送っていたに違いないと思った。
あの事故さえなければ。
「マユ、あなたが女の子で良かった」
大きな罪悪感と、切ない気持ちを小さな微笑みで誤魔化しながら、私はマユの頭を冬真さんがしたように撫でてみた。