ゆえん
昨日までと変わらない朝を過ごした。
冬真さんは昨晩のことについて何も触れないし、私も自分からは言い出す勇気がなかった。
冬真さんと出会ってから、私は冬真さんが自分のことをどう思っているかが気になって仕方ない。
今まで、自分の気持ちと感情しか考えていなかった私が、どうしてこうも冬真さんの気持ちが気になって臆病になるのかがすっきりしなかった。
ひとつわかるのは、私は最初から冬真さんに対して罪悪感を持つことになったこと。
憎まれても当然だと思っていたのに、彼は私を憎むどころか店に置いてくれている。
修ちゃんを連れて逃げた菜穂を私は赦せなかった。
憎んでもいた。
だから自分のしたことで誰かが傷つくことなどお構いなしでいられたのだろう。
私と付き合った男たちの中には、私に傷つけられた人がいるかもしれない。
けれど、自業自得と罪の意識を持っていなかった。
それなのに冬真さんという人間を知るほどに、自分の愚かさと罪深さを感じてしまうのだ。
「あの、毛布ありがとうございました」
やっと思い切って言えたのは、毛布のことだった。
「風邪引かなかった?」
返ってきた言葉に私はただ頷くことしか出来なかった。