ゆえん
「子として、と言葉が出てきているから浩介さんの子供というわけでは無いのかな、と」
浩介さんは冬真さんの答えを面白がっているようで、口角を上げているのが私にも分かった。
「それにあり得ないでしょう」
「お前、さすがだな。俺のこと良く解っている」
「そりゃあ、長いから。付き合いが」
浩介さんの評価に冬真さんも満足そうに微笑んでいた。
「楓はこれを見たのか」
「見せる必要もないかと思ったので、まだ」
「楓も、お前みたいに俺のこと解っているかな」
メモを冬真さんの顔の前に出して、浩介さんは言った。
「見せるつもりなんですか」
「反応に興味があるけれど、少し怖い気もする。それに、あの子の親が迎えに来ない可能性もあるからな。どっちにしてもこのままじゃいられないだろ?」
「俺が育ててもいいと思ってます」
何の迷いもなく冬真さんは言った。
「真湖の代わりにか?」
冬真さんは答えなかったが、きっとそうなのだろう。
横で聞いていた私の鼓動が早くなった。