ゆえん
「そう。おじいちゃんも一緒よ」
「ママは?」
美穂子は頭を掻きながら、マユに「ママも一緒よ」と言った。
「新しいパパは?」
マユが言うと、美穂子は顔をくちゃくちゃにして、言い辛そうにマユを見た。
「新しいパパじゃなかったんだ、あの人。で、葉山浩介がパパって話も嘘。ごめんね、マユ」
マユはにっこり笑って「ママはウソがすきだね」と言った。
マユのその笑顔には母親に嫌われたくなくて笑うしかない気持ちが表れているようで、私は息が詰まりそうになる。
「嘘って何?」
無性に腹が立った。
マユがどれだけ、ママを恋しがっていたか。
それを私たちに見せないように頑張っていたか、この女はちっとも分かってない。
「私なんかにあんなメモを渡させて、他人に誤解させること書いて。何が嘘よ。信じられない。母親じゃないわ」
自分でも何でこんなに怒っているのか不思議なくらいだった。
母親になった経験もない私がこんなことを言うのは可笑しいけれど、そう叫んでいた。
「だから、ごめんって言ってるじゃない」
美穂子は全然動じない。
思わず手を振り上げていた。
美穂子の頬を目掛けていた私の右手は冬真さんの右手に止められていた。