ゆえん


私だけがこの状況を納得出来ていなかった。

美穂子みたいな母親にマユを渡していいわけがない。

また、いつ置いて行かれるか分からないじゃない。


「もう絶対こんなことが起きないように、私たち夫婦がしっかりと娘と孫を見ていきますから」


美穂子の母親が私に向かって頭を下げた。


マユが美穂子と手を繋いで、カフェコーナーから出て行く。

その姿を見ているだけで私は涙が零れてどうしようもなかった。

冬真さんは私の肩を支えてくれていた。

泣いている私を見て、楓が涙ぐんでいるのがわかった。

人前で涙を見せたくはないけれど、マユが振り返って手を振った瞬間に涙でマユの姿が霞んだ。



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