ゆえん
「修二と俺が友だちだってことを知っているよね」
「はい」
だからこそ、一年前と数か月前に、冬真さんは私のために東京まで一緒に行ってくれて、私はやっと修ちゃん本人に会って、彼への執着心を解くことが出来たのだ。
「俺はまだ、君に言ってないことがある」
言いにくそうに口を押えてから、冬真さんは私を見た。
「修二と菜穂さんが東京に逃げた日、あの二人を東京まで車で送ったのは、俺だ。修二に頼まれて、他人には知られたくない事情があるのは、見てすぐに分かったけれど、それを訊ねようとはしなかった」
何を言われるのかと身構えていた分、一気に気が抜けた。
「そんなこと」
もう私には修ちゃんのことは過去だった。
あんなにも執着していたのに、この一年思い出すことはあっても、過去でしかなかった。
修ちゃんのおかげで冬真さんに会うことが出来たとまで思っていたのだ。
「俺があの時、ちゃんと事態を把握していれば、修二たちを思い留まらせることが出来たかもしれない。そうしていれば理紗が長い間、行き場のない感情に囚われることもなかっただろうし、もっと違った人生を歩けたはずだ。もっと早くに話すべきだったのに、言えなかった。済まない。本当に」
冬真さんは私に頭を下げた。
これっぽっちも冬真さんのせいではない。
修ちゃんのせいともあまり思っていない。
悪いのは菜穂だ。
それなのに、冬真さんが謝ってくるなんて。