ゆえん
「確かお前が大学時代に組んでいたバンドのヴォーカルの名前、なんとか修二って言わなかったか?」
ここで修二の名前が出てくるとは……。
もう十年ほど会っていないが、忘れることはない友人だ。
「今内です。今内修二」
「やっぱり」
「修二がなにか?」
「昨日、しつこく訊かれたよ。あのコにとって、特別みたいだな」
「修二が?」
「らしい。で、楓を毛嫌いしているのは、修二を奪った女と重なるからだそうだ」
「……」