ゆえん
Ⅰ-Ⅷ
*
あの魔の日は、真湖が自分で歩くようになり、言葉も少しずつ話すようになって、最高に可愛い盛りの七夕だった。
いつも通り会社に出勤した冬真は、課長に午後から大阪へ二泊の出張を頼まれた。
出張の準備をするため、一度自宅に戻った。
真湖の一才九ヶ月児健診が午後一時からあるからと、ちょうど沙世子たちも出掛ける準備をしていた。
外は朝から降っていた雨が強くなってきて、遠くで雷の音が聞こえていた。
冬真は駅までタクシーで行くつもりだった。
「私も行く準備が終わったし、通り道だから一緒に乗っていけば? そのほうが真湖も喜ぶよ」
沙世子が笑顔で提案した。
「そうだなぁ。じゃあ、一緒に乗って行こうかな」
あの時、そうした自分を呪わずにはいられない。