ニコル
　「怖い・・・。」
　何人からの生徒から小さく声が漏れた。窓を塞いでしまった事で、部屋に明かりはほとんど入らない状態になっていた。その事が、生徒達の不安を増大させたようだった。そんな生徒の為に、浩二は電気のスイッチに手をかけた。
　何回も、何回もスイッチをいじってみるが、電気が点くことはなかった。
　―――壊れているのか？
　暗闇の時間が長くなるにつれ、生徒達がどんどん不安になっているのが感じられ、浩二はやりきれない気持ちになっていた。
それは香田も同じだった。少しの明かりを頼りに何かを探し始めた。
　「確か、この辺にあったような・・・。」
　少しすると香田が戻ってきた。
　「ほらっ。これで怖くないだろう。」
　香田の目の前に、ポッと小さな火が現れた。それは緊急時に使用するための、ロウソクの小さな灯だった。
　「綺麗・・・。」
　「クリスマスみたい。」
　その小さな灯に照らされた、生徒達は少しだけ安堵の表情を浮かべていた。浩二もその表情を見て少しだけほっとした。
< 102 / 155 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop