ニコル
 「ねえ、英司。これからどこに行く?」
 「そうだな。ちょっと、腹も減ったし飯でも食いに行くか?」
 そんな楽しそうな会話をしながら、ふたりの乗った車は走っていた。それは本当に楽しい時間だったのだろう。英司が彼女に何かを囁きかけようと、そっと顔を向けた。英司は彼女が、満面の笑顔で自分の事を見詰め返してくれると思っていた。
 「ま、前・・・。」
 彼女のその表情と言葉に、英司も慌てて前を見た。
 交差点の信号は赤に変わっていた。
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