ニコル
 「ボニー・・・。」
 彼女を囲む人垣を縫いながら、彼女の母親が現れた。その後ろには、父親の姿もあった。
 ―――お母さん。お父さん・・・。
 やはり、口にすることは出来なかった。母親は泣きじゃくり、父親はただ、呆然と立ちつくし彼女の顔を見ているだけだった。彼女はそんな両親の顔を見たくはなかった。だから、必死に自分は大丈夫だと訴えたかった。
 ―――お母さん。お父さん・・・。私は大丈夫よ。だから、そんな顔はしないで。
 体は動かなくても涙だけは流すことが出来た。
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