ニコル
 「どうしたの?」
 ・・・・・・・・・。
 「どうしたの?」
 二度目の声でボニーは目を覚ましました。
 目の前には金髪の綺麗な顔をした男の子が立っていました。ただ、その男の子は普通の白人の子供ではありませんでした。その瞳は右目は真っ黒、左目はボニーと同じブルーの綺麗な瞳でした。よく見ると肌も少し黄みががっている気がしました。
 ボニーは男の子に話しかけました。
 「こんにちは。ここはどこなのか知ってたら、教えてくれる?」
 「ごめんね。僕もここはどこかわからないんだ。」
 その答えにボニーはがっかりしました。
 「そう・・・。」
 残念そうなその表情に何かを感じたのか、男の子は慌てて言葉を付け足しました。
 「でもね、あそこにいるおじさんが言ってたよ。」
 男の子の指さした先を、ボニーは目を懲らして見ました。すると、ぼんやりと黒い何かが、人の形になっていくように見えました。でも、はっきりと何なのかはわかりません。
 「なんて言ってたの?」
 そう聞くと急にボニーは体に寒気を覚えました。
 ―――何?この感じ・・・?
 もう一度、男の子の指を指した方を見ると、ボニーは何かに気が付きました。真っ暗な中に小さな白いものが現れました。現れたり、消えたりしていました。ただ、ボニーは怖くて、怖くて、その方向を見る事が出来ません。
 「どうしたの?」
 男の子は下から彼女の顔を覗き込み、にっこり笑いました。
 「なんでもないよ。ちょっと、寒気がしただけ。」
 そう言って顔を上げると、目の前にさっきまで遠くにあった白いものがありました。その白いものが何なのかボニーにははじめわかりませんでした。ただ、全身を覆う寒気がどんどん増していきます。
 その白いものの中に何かが現れ始めました。右側の白いものの中には真っ黒いものが、左側の白いものの中には綺麗なブルーが現れました。そのふたつがはっきり現れた時、ボニーは自分の目の前に何が現れたのか気が付きました。
 ―――これは瞳・・・。
 そう思った瞬間、その瞳は陰鬱な視線を彼女に送りました。まるで、心臓を鷲掴みされたような衝撃がボニーを襲い、彼女の体から金色の魂を抜きだしていきました。
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