ニコル
 「ほらっ。どけっ。」
 険しい顔つきで山口がテレビリポーターの間を抜けて、真生の元にやって来た。そんな山口の表情を見て、真生はますます激しく泣いた。
 山口はゆっくりと真生の目の前にしゃがみ込むと、さっきまでの表情からは信じられないほど優しい顔つきで話しかけた。周りの大人達からすれば、そんなに優しい表情には見えなかったかもしれない。でも、真生にはさっきまでの大人達の仕打ちもあり、本当に神様のような人に思えていた。
 「大丈夫かい?」
 その言葉をかけられた瞬間、真生は山口の胸の中に顔を埋めていた。
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