ニコル
 「そんな事ないです。」
 「そんな事ないです。」
 「そんな事ないです。」
 山口は慌てて、真生の頬を大きな手のひらで包み込んだ。
 「落ち着いて。ほらっ、大きく息を吸って。」
 山口の言うとおりに、真生は何度も深呼吸をした。深く、深く。そして、山口の暖かさを感じた。それが真生の安らかな気持ちを取り戻させた。
 「ごめんなさい。でも、本当に怖いことを思い出して・・・。」
 「いいんだよ。でも、真生ちゃんが良かったら、本当に良かったらだけど、学校で起きたことを教えてくれないかな?おじさん達も一生懸命調べているんだけど、何が起きているのか全然わからないんだ。」
 真生にはとても寂しそうな顔に見えた。
 少しの沈黙のあと、真生は口を開いた。
 「わ、わかりました。でも、信じてもらえるかどうか・・・。」
 「今はどんな些細な情報でも知りたいんだ。気にせずに話してくれないか。おじさんは信じるから。」
 その真剣な目に真生は少しずつ、整理をしながらゆっくりと説明し始めた。
< 118 / 155 >

この作品をシェア

pagetop