ニコル
 「うるさい。」
 香田がボソッと言った。
その言葉は、浩二にも他の生徒達にも、なんて言ったのかは聞こえなかった。
 「香田さん、何か言いましたか?」
 浩二のその問いかけには、香田は黙ったままだった。気のせいかと思い、浩二はまたハヤテの方を見ていた。

プルルル・・・、プルルル・・・。

 「うるさい。」
 今度はみんなにも聞こえるくらいに大きな声で香田は言った。浩二は慌てて香田の元に駆け寄った。
 「どうしたんですか?香田さん。」
 「あの音がいけないんだ。あの音がなければ、みんな幸せだったんだ。」
 香田の意味不明な言葉に、浩二は一瞬たじろいだ。
 「落ち着いてください。香田さん。生徒達もいるんです。待っていれば助けが来ますから。」
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