ニコル
　宙を舞っていた糸のようなものが、一気に床に落ちた。

　カタカタ、カタカタ・・・。

　浩二も生徒達もその音を聞いて、全身に鳥肌が立った。香田の体には、ニコルの頭が生えていた。
　「あ、あわ。」
　誰もが足に根が生えたかのように動かす事が出来なかった。　全身の汗腺から汗という汗が一気に噴き出した。浩二の瞬きの数が以上に多くなった。

　ニコルの頭がグラグラと揺れだした。そんな様子を見ても、どうすればいいのか、考える事すら出来なくなっていた。揺れは次第に激しくなり、最後にさっきと同じ鈍い音を立て床に頭が落ちた。なのに、まだ、香田の体にはニコルの頭があった。
　その頭も揺れだし、また、床に落ちた。
　そこで浩二は生徒達に叫んだ。
　「みんな、扉を塞いでいるものを退かすんだ。早く、ここから逃げるんだ。」
　その声で生徒達の足に生えていた根は断ちきられた。
　「ハヤテ。携帯で助けを。助けを呼んでくれ。」
　浩二は側にあったフライパンを手に取り、ニコル達に向かっていった。
< 128 / 155 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop