ニコル
 その物音は警官隊の音だった。
 ふたりの涙はうれし涙に変わった。
 ―――助けて。
 走りすぎたせいだろうか、声をあげる事が出来なくなっていた。それでも、ひとりの警官がふたりに気が付いてくれた。
 「大丈夫か?」
 その声を聞いてふたりは警官の所に走ろうとした。けれども、足が動かない。いつの間にか、ふたりの足は激しい痙攣を起こしていた。
 ―――動け。動けよ。
 焦って、太ももを叩いてみても足は全く前に出ない。
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