ニコル
 「長瀬ぇ。そっちに行ったぞおぉ。」
 長瀬は拳銃を構えた。
 ただ、ニコルの陰鬱な視線、そして、その姿は長瀬をまだ恐怖させていた。ねらいを定めようと必死になればなるほど、逆に定まらなかった。
 銃声が鳴り響いた。それは鳴り響いただけだった。
 ふわりと方向変換をし、長瀬の両腕をもぎ喰った。言葉にならない痛みが長瀬の全身を覆った。
 ニコルは腕だけを喰らうと、拳銃を地面に吐き捨てた。高い所から落としたせいか、はずみで暴発した。
その音が鳴った瞬間、長瀬はいなくなっていた。
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