ニコル
恐怖する視線
 浩二はゆっくりと廊下を歩いていた。授業中で誰もいない廊下は、浩二がいつも歩いている廊下とは雰囲気が違っていた。夕方の生徒達が帰った廊下は、何度も歩いているから慣れたものだったが、今日みたいに気持ちの良い晴れの午前中に静かな廊下を歩くのは、気がつけば、はじめての事だった。
 静かな廊下は保健室までの道のりを遠く感じさせた。あまりに遠く感じる道のりに、浩二は廊下の窓の縁につかまり外の景色を眺めた。
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