ニコル
 まず、勢いよくカーテンを開けた。
 それでもニコルは頭から布団を被ったままだ。浩二は大きくため息をついた。
 「本当に誰に似たんだか・・・。」
 浩二もボニーも教師という職業柄、時間をしっかり守る方だった。それなのに、一人息子のニコルは学校でも評判の遅刻魔だった。
 「こら、ニコル。お前がそんなだと俺が校長先生に怒られるんだよ。」
 いつもなら、クラブの朝練やら何やらで、いつも先に学校に行っている浩二だったが、今日はたまたまゆっくり出勤する事になっていた。
 「今日は引っ張ってでも遅刻させないからな。」
 そう言いながら布団を思い切りはがした。
 「寒い・・・。」
 春とはいえ、まだ朝方は薄ら寒かった。ニコルは丸まった状態で姿をさらした。さながら、カブトムシの幼虫のようだった。
 「はい。シャンとする。」
 ヒョイとニコルを持ち上げ床に座らせた。そして、パジャマの裾を持つと間髪入れずそのまま脱がした。あっと言う間に、ニコルはパンツ一丁になっていた。
 「へっくしょん。」
 「ほら、さすがに目が覚めただろ。着替えた、着替えた。」
 そう言いながら着替えをニコルに放り投げた。
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