ニコル
 ニコルは見つけた。
 全身が真っ黒い格好をした中年の男だった。
 「おじさぁん。」
 満面の笑みを浮かべてその男の所に走っていった。浩二にもニコルが男の所に走っていくのが見えた。
 ―――誰なんだ?
 話し込んでいるニコルの姿を見て、走らなくても追いつけるだろうと、浩二は走るのを止めた。思った通り、ニコル達はすぐ目の前に見えてきた。ふたりの会話が、少しずつだけれども聞こえてきた。
 「どうだい?楽しいかい?」
 「うん。少し面倒くさいけど楽しいよ。」
 ―――何が楽しいんだ?いったい、この男は誰なんだ?
 浩二は近づくにつれて、その男に嫌悪感を抱いていた。
 「面倒くさくなったら、もう一度、やり直せばいいんだよ。ここは君の世界なんだから。」
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