ニコル
 自分の席についてもふたりの震えはなかなか収まらなかった。
 一馬は無理に深呼吸をしようとして咳き込んだ。巧の目にはうっすらと涙が浮かんで、その涙を隠そうと必死だった。
 そんなふたりの姿を見て、クラス中の生徒が騒いでいた。
 「ねえ、なんであのふたりはあんなに震えているの?」
 「あのふたりがあんな風になるなんてはじめて見たよ。」
 口々にそう言っても、なぜふたりがそうなったのかわかるものはいなかった。それは一番側で見ていた真生も同じだった。
 ―――ニコル君は何もしていないのに、どうして?
 ニコルを中心に、浩二のクラスには陰鬱な雰囲気が生まれ始めていた。
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