ニコル
沈黙する教室
「先生、すごい顔色だよ。大丈夫?」
浩二が教室に戻ると、生徒達が口々にそんな言葉を投げかけた。ただ、そんな言葉にいつもと違う何かを感じた。気になって教室を見回すと一馬と巧の様子が、まるでさっきまでの自分のように憔悴しきっている事に気が付いた。
「どうした?ふたりとも。」
ふたりの側に行って声をかけても、一馬も、巧もうまく話す事が出来ないくらいに怯えていた。大声で生徒達に浩二は声をかけた。
「何があったか知っている人?」
大声でありながらも、優しい口調で問いかけた。
さっきまでの光景はクラス中の誰もが知っていた。けれども、いったい何が起きたのかはクラス中の誰も知らなかった。それにもし知っていたとしても誰も話さなかっただろう。“一馬と巧がニコルをいじめた”それが原因になっている事は明らかだった。だとしたら、その事を浩二に“チクる”事になる。そのあとはお決まりの通りだと想像がついたからだ。
そんな事もあって誰も浩二の問いかけに答えなかった。
ふたりの様子は尋常ではなかった。浩二は諦めずにもう一度聞いた。
「もう一度、聞くよ。何があったか知っている人?」
やはり答えは同じだった。
浩二は諦めてもう一度ふたりに話しかけた。
「何があった。いつものお前ららしくないじゃないか。ほら、先生に話してみろ。」
巧は相変わらず何も話せるような状態ではなく俯いていた。けれども、一馬はゆっくりと首を持ち上げ何かを訴えようとした。直視なんて事は恐ろしすぎて出来なかったのだろう、ほんの一瞬だけニコルの事を見た。
浩二が教室に戻ると、生徒達が口々にそんな言葉を投げかけた。ただ、そんな言葉にいつもと違う何かを感じた。気になって教室を見回すと一馬と巧の様子が、まるでさっきまでの自分のように憔悴しきっている事に気が付いた。
「どうした?ふたりとも。」
ふたりの側に行って声をかけても、一馬も、巧もうまく話す事が出来ないくらいに怯えていた。大声で生徒達に浩二は声をかけた。
「何があったか知っている人?」
大声でありながらも、優しい口調で問いかけた。
さっきまでの光景はクラス中の誰もが知っていた。けれども、いったい何が起きたのかはクラス中の誰も知らなかった。それにもし知っていたとしても誰も話さなかっただろう。“一馬と巧がニコルをいじめた”それが原因になっている事は明らかだった。だとしたら、その事を浩二に“チクる”事になる。そのあとはお決まりの通りだと想像がついたからだ。
そんな事もあって誰も浩二の問いかけに答えなかった。
ふたりの様子は尋常ではなかった。浩二は諦めずにもう一度聞いた。
「もう一度、聞くよ。何があったか知っている人?」
やはり答えは同じだった。
浩二は諦めてもう一度ふたりに話しかけた。
「何があった。いつものお前ららしくないじゃないか。ほら、先生に話してみろ。」
巧は相変わらず何も話せるような状態ではなく俯いていた。けれども、一馬はゆっくりと首を持ち上げ何かを訴えようとした。直視なんて事は恐ろしすぎて出来なかったのだろう、ほんの一瞬だけニコルの事を見た。