ニコル
 その笑みを確認すると真生は、何も言わずにふたりを連れて教室を出て行った。浩二は真生が出て行くのを見送ると教壇に戻ろうとした。
 ―――見てる。
 ニコルは廊下を出て行く真生達を目だけでなく首まで思い切り動かして、粘着質な視線を浴びせていた。その光景はあまりにも異様に浩二の目に映った。気が付くと何人かの生徒も、同じように思ったのだろう、小さな声でニコルの事を囁き始めた。
 途端、ニコルはすごい勢いで浩二達の方へと視線を移した。
 「ひっ。」
 浩二も、何人かの生徒も思わず声が漏れた。が、浩二は一度天井を見上げ、すぐに教壇に戻った。
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