ニコル
空には雲がゆっくりとゆっくりと流れていた。風が若草の香りを浩二へと届けた。何もないけれど、平和に生きていけるそんな生活が浩二は大好きだった。
「今日から転校生が来るんだったな。しかし、もうすぐゴールデンウィークになるって言うのに、ずいぶん変な時期に転校してくるな。もう少し早ければみんなと一緒に新学期が迎えられたのに・・・。」
そう独り言をつぶやく浩二の表情は寂しそうだった。
浩二は根っからの教師というやつだった。だから、少しでも生徒がつらくなるような事は避けたいと思っていた。それに、浩二も子供の頃、転校が多かったせいで苦労した事もあるのだろう。
まるで、自分の事のように考えを巡らせながら職員室の扉をあけた。
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