ニコル

誰もいない保健室

　真生は職員室に向かっていた。堺が保健室にいない時、他にいそうな場所は真生には職員室しか思い浮かばなかったからだ。
　静かに廊下を歩いていると職員室が見えてきた。なんとなくだけれども、真生はいつもと職員室の雰囲気が違う感じがした。けれども、いつも職員室に来るのは授業が終わったあとだし、今は授業中なのだから当然だ、そんな軽い気持ちで深く考えはしなかった。
　「失礼します。」
　恐る恐るといった感じで真生は職員室の扉を開けた。職員室にも堺の姿はなかった。それどころか、職員室にも誰の姿もなかった。授業中だから、ほとんどの先生はいないのは当然のことだったが、いつも職員室の右隅の席に座っている教頭の姿も見えないことは今まで一度もなかった。
　「教頭先生？」
　小さな声を出してみたが何も反応はなかった。
　「教頭先生？」
　もう一度、今度はもう少し大きな声を出してみた。けれども、返事はなかった。