ニコル
 教頭の事は気になったが、今は堺を探すことの方が大切だと思い職員室を出ようとした。

 「どうしたんだい?」
 急に後ろから声をかけられて、真生は思い切り飛び上がった。振り向くと教頭がいた。
 「教頭先生・・・。」
 一気に跳ね上がった心拍数を強引に元に戻そうと、なるべく冷静に声を出したつもりだった。でも、真生にはまだそんな事は無理だったのだろう。“教頭先生”の最後の“せい”で、声が裏返ってしまった。
 「今は授業中だよね。いったいどうしたんだい?」
 優しい口調でありながら、生徒を戒めるように言った。
 「あの、私、堺先生を捜しているんです。保健室にいなくて・・・。教頭先生、堺先生を見ませんでしたか?友達が保健室で待っているんです。」
 教頭の言葉を聞いて、真生はまるで必死に言い訳しようしているようだった。そんな真生に、教頭はゆっくりと首を左右に振った。
 「見てないなぁ。よしっ、先生が一緒に行こう。先生でも少しくらいならわかるだろう。」
 そう言うとふたりで保健室に向かって歩きだした。
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