ニコル
「おはようございます。」
転校生に少しでも気分良くしてもらおうと言う気遣いからだろうか、浩二はいつもより元気に挨拶をした。それを見て教頭が浩二のもとへ、転校生を連れてやって来た。
「近藤君。彼が今日から君のクラスに入る子だ。名前は“近藤ニコル”君だ。お父さんは日本人、お母さんがアメリカ人だそうだよ。」
そう言うと横にいる小さな男の子を自分の前に引き寄せた。
浩二は小学三年生を受け持っていた。小学三年生の平均身長が百三十センチちょっとだから、それからするとだいぶ小さかった。よく見ても小学一年生、人によっては幼稚園児と間違えるのではないか、そう思えるほどだった。
しかし、男の子の表情は信じられないほど大人びているというか、冷めた目で浩二を凝視していた。瞬きなど絶対にしない、陰鬱なその瞳に浩二は少し怯えた。
―――この子、なんて目をしているんだ・・・。こう言う子はいじめに遭いやすいんだよな。気をつけないと。
一瞬でも生徒に懐いてはいけない感情をもった事を浩二は反省した。そして、その気持ちの反省から、“楽しい学校生活が送れるようにしてあげたい”と考え、男の子の目の前にしゃがみこんで挨拶をした。
「こんにちは。近藤ニコル君。僕が担任の近藤浩二です。先生も近藤って言うんだ。同じ“近藤”同士よろしくな。」
そんな浩二の言葉に、ニコルは挨拶を返す訳でもなく、頷くでもなく、ただ、相変わらず浩二を凝視していた。目の前でも、その陰鬱な瞳で見つめ続けられた浩二はそれ以上言葉を続ける事が出来なかった。
転校生に少しでも気分良くしてもらおうと言う気遣いからだろうか、浩二はいつもより元気に挨拶をした。それを見て教頭が浩二のもとへ、転校生を連れてやって来た。
「近藤君。彼が今日から君のクラスに入る子だ。名前は“近藤ニコル”君だ。お父さんは日本人、お母さんがアメリカ人だそうだよ。」
そう言うと横にいる小さな男の子を自分の前に引き寄せた。
浩二は小学三年生を受け持っていた。小学三年生の平均身長が百三十センチちょっとだから、それからするとだいぶ小さかった。よく見ても小学一年生、人によっては幼稚園児と間違えるのではないか、そう思えるほどだった。
しかし、男の子の表情は信じられないほど大人びているというか、冷めた目で浩二を凝視していた。瞬きなど絶対にしない、陰鬱なその瞳に浩二は少し怯えた。
―――この子、なんて目をしているんだ・・・。こう言う子はいじめに遭いやすいんだよな。気をつけないと。
一瞬でも生徒に懐いてはいけない感情をもった事を浩二は反省した。そして、その気持ちの反省から、“楽しい学校生活が送れるようにしてあげたい”と考え、男の子の目の前にしゃがみこんで挨拶をした。
「こんにちは。近藤ニコル君。僕が担任の近藤浩二です。先生も近藤って言うんだ。同じ“近藤”同士よろしくな。」
そんな浩二の言葉に、ニコルは挨拶を返す訳でもなく、頷くでもなく、ただ、相変わらず浩二を凝視していた。目の前でも、その陰鬱な瞳で見つめ続けられた浩二はそれ以上言葉を続ける事が出来なかった。