ニコル
 廊下に出ると、ざわめき声はいっそう激しくなった。
 ―――近藤先生のクラスも遂に学級崩壊か?
 そんな嫌な事を考えながら扉を開けた。
 「近藤先生、うるさくて授業が出来ないですよ。」
 そう言っても浩二の姿はなかった。代わりに生徒達が声を揃えて答えた。
 「先生は今いませぇん。」
 「今、いないってどこに行ったんだ?」
 さっきの事もあり心配になった。
 「たぶん、保健室です。」
 今度はひとりの生徒が小声で答えた。
 「保健室?それで近藤先生は大丈夫なのか?」
 質問はその生徒だけに向けられた。あまり話した事のない先生に緊張したのだろうか、その生徒はなかなか答える事が出来ずにいた。その態度を見て、江川は仕方なく他の生徒に同じ質問をした。
ニコルの隣にいた生徒が答えてくれた。
「気分が悪くなった子を大友さんが保健室に連れて行ったんですけど、大友さんが帰ってこなくなっちゃったので捜しに行ったんです。」
その言葉を聞いてホッとすると同時に、隣にいたニコルの金髪が気になった。
―――あの子か、転校生って・・・。
江川がそう思った瞬間、ニコルが江川の方を見た。その視線に江川は体が硬直するのを感じた。
―――な、なんだ。あれ?外にいるのと、そこに座っている子・・・同じ顔だ。
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