ニコル
いつもなら、ホームルームの時間までおとなしいクラスなのに、今日は廊下まで騒いでいる声が聞こえていた。
―――なんか、教室がうるさいな。さては転校生の話をしているな。転校生は何をするにしても、初日が肝心だからな。ニコル君にもきちんと言おう。
教室の扉の前で、もう一度浩二はニコルの前にしゃがみこみ、あの陰鬱な瞳を見つめて言った。
「いいかい。ニコル君。転校生は初日の印象がすごく大切なんだ。だから、さっきの職員室の時みたいに、何も挨拶しないなんて事はだめだ。きちんと挨拶はするんだよ。」
ニコルの瞳は浩二の言葉を遮ろうとしていた。相変わらず、返事をしないニコルにもうそれ以上言葉を続ける事が出来ずに、浩二はため息をつきながら立ち上がった。
 もう一度、ニコルを見下ろして念を押した。
 「いいね。」
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