ニコル
用務員室は叫び声で埋まった
「香田さん。香田さん。」
用務員室の前で、教頭は用務員の香田を呼び出していた。しかし、香田の返事はなかった。
「おかしいな。花壇の手入れでもしているのかな?」
少し気が引ける気がしたが、生徒の事もあったので勝手に入る事にした。
「おじゃまするよ。」
扉を開けると誰かいるような感じがした。教頭はもう一度、声をかけてみた。
「香田さん、いるのかい?工具箱を貸してほしいんだけどね。」
やはり、返事はなかった。
窓からはポカポカとした日光が降り注いでいた。教頭はそれを見てすぐにピンと来た。
―――この陽気で、また昼寝しているな。本当に仕事しない人だからな。
少し呆れながら、奥の六畳間に入ろうとした。
「香田さん、起きなさいよ。」
そう言いながら襖に手をやると中から何か音がしているのが聞こえた。
―――呑気なもんだね。仕事中に高鼾かい。
さぼっている香田に気遣う事もないだろうと思い、教頭は襖を思い切り開けた。
「香田さん・・・?」
そこにいると思っていた香田の姿はなかった。代わりに嫌と言うほどの静けさが六畳間に拡がっていた。教頭は香田のたちの悪いいたずらだろうと思い、うろうろと香田を捜し始めた。
「香田さん。工具箱を借りたいだけなんだよ。居眠りの事は怒らないから出てきてくれないかい?」
押し入れにも、こたつの中にも香田の姿はなかった。
「変だね。隠れているんじゃないのかい?」
陽が射している窓を開け、外を見回してみた。しかし、辺りには香田の姿はなかった。
―――さっきの音は気のせいだったのかね。仕方ない、勝手に工具箱を探すとするか。
今度は工具箱を求めてうろうろし始めた。
「工具箱、工具箱・・・。」
そう言いながらいつも工具箱が閉まってある棚に手をかけた。いつもなら、軽く開いていたはずの棚が、今日に限ってなかなか開かなかった。変だなと思いながらも、もう一度棚の取っ手を力一杯引っ張った。
取っ手が取れ、教頭は思いきり後ろに倒れた。
「あいたたた・・・。」
頭に出来た小さなこぶを押さえながら起きあがろうとした。ふと、何かを感じ天井を見上げた。教頭はそのまま動けなくなった。
天井が見えなくなるくらいに、おびただしい数の顔がそこにはあった。
その顔は教頭と目があった途端、凄まじい勢いで音を立て始めた。
用務員室の前で、教頭は用務員の香田を呼び出していた。しかし、香田の返事はなかった。
「おかしいな。花壇の手入れでもしているのかな?」
少し気が引ける気がしたが、生徒の事もあったので勝手に入る事にした。
「おじゃまするよ。」
扉を開けると誰かいるような感じがした。教頭はもう一度、声をかけてみた。
「香田さん、いるのかい?工具箱を貸してほしいんだけどね。」
やはり、返事はなかった。
窓からはポカポカとした日光が降り注いでいた。教頭はそれを見てすぐにピンと来た。
―――この陽気で、また昼寝しているな。本当に仕事しない人だからな。
少し呆れながら、奥の六畳間に入ろうとした。
「香田さん、起きなさいよ。」
そう言いながら襖に手をやると中から何か音がしているのが聞こえた。
―――呑気なもんだね。仕事中に高鼾かい。
さぼっている香田に気遣う事もないだろうと思い、教頭は襖を思い切り開けた。
「香田さん・・・?」
そこにいると思っていた香田の姿はなかった。代わりに嫌と言うほどの静けさが六畳間に拡がっていた。教頭は香田のたちの悪いいたずらだろうと思い、うろうろと香田を捜し始めた。
「香田さん。工具箱を借りたいだけなんだよ。居眠りの事は怒らないから出てきてくれないかい?」
押し入れにも、こたつの中にも香田の姿はなかった。
「変だね。隠れているんじゃないのかい?」
陽が射している窓を開け、外を見回してみた。しかし、辺りには香田の姿はなかった。
―――さっきの音は気のせいだったのかね。仕方ない、勝手に工具箱を探すとするか。
今度は工具箱を求めてうろうろし始めた。
「工具箱、工具箱・・・。」
そう言いながらいつも工具箱が閉まってある棚に手をかけた。いつもなら、軽く開いていたはずの棚が、今日に限ってなかなか開かなかった。変だなと思いながらも、もう一度棚の取っ手を力一杯引っ張った。
取っ手が取れ、教頭は思いきり後ろに倒れた。
「あいたたた・・・。」
頭に出来た小さなこぶを押さえながら起きあがろうとした。ふと、何かを感じ天井を見上げた。教頭はそのまま動けなくなった。
天井が見えなくなるくらいに、おびただしい数の顔がそこにはあった。
その顔は教頭と目があった途端、凄まじい勢いで音を立て始めた。