ニコル
 真生は賢い生徒だった。
 去年の事だった。真生のクラスで“こっくりさん”が流行った事があった。一部の生徒が、祟られたと騒ぎ、授業が受けられない位になった事があった。その時に、“人は怖いと思うとそのように思えてしまう事があると言う事”を浩二が説明してくれた。
 ―――怖いと思うからニコル君の顔に見えるのよ。
 恐怖からだろう、真生はわかっていながらも、強く自分自身に言い聞かせるようにした。そう思った瞬間の事だった。ニコルの瞳が瞬きをしたように見えた。
 ―――えっ。
 そう見えると何となくそこにあるシミは本当のニコルの顔のように思えてきた。その気持ちを閉じこめようと、もう一度、真生はさっきの言葉を心の中で唱えた。
 ―――怖いと思うからそう見える。
 その言葉を証明させる為だけに、天井を再び見上げた。
 ―――笑ってる。
 さっきまで無表情だったニコルの顔は口を大きく開き、まるで真生をあざけているかのようだった。
 「きゃあああああああ。」
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