ニコル
教室の扉の前には、江川と思われる姿があった。でも、何か雰囲気が違っていた。
「江川先生・・・。」
そう声をかけると、首だけがこちらを向いた。その顔は江川ではなくニコルだった。浩二は何がなんだか理解できなかった。そんな浩二に、ニコルはまたあの視線を送った。浩二はその視線に嫌悪感を抱かずにはいられなかった。そして、その嫌悪感は更に増す事になった。
江川の体だけが突然倒れた。その瞬間、床に大きく、大きく血の海が拡がった。あまりの光景に、浩二は気分が悪くなり倒れそうになった。が、ニコルがそれを許してはくれなかった。
ニコルは浩二目掛けて飛びかかってきたのだ。
足がすくんで浩二は動く事が出来なかった。
―――大友、みんなごめん。
浩二は諦めから瞼を閉じ、ただ、立ちつくした。
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