ニコル
「こ、こんちくしょう。」
突然の声に、浩二はすぐに瞼を開いた。
―――香田さん?
用務員の香田が、持っていた箒で思い切りニコルをぶん殴っていた。
「近藤先生。早く、生徒を。」
その声をきっかけに、浩二の足は素早く教室の中に向かった。しかし、教室の中には、もうほとんど生徒はいなかった。何がどうなったのか、浩二は気にする暇すらなかった。今はただ、ここにいる生徒達を助けなければ、その気持ちだけだった。
「みんな、先生について来なさいっ。」
大声で叫んだ。生徒達は一斉に立ち上がり浩二の後を追うように走りはじめた。
走りはじめてすぐに、ひとりの生徒が口を開いた。
「先生。美咲ちゃんがいない・・・。きっと、まだ教室にいるよ。」
少ないとはいえ、浩二の周りには何人もの生徒がいた。中にはけがをしているものもいた。そんな状況の中、教室に戻るのは得策とは思えなかった。
―――どうする?この子達を危険な目に遭わせるかもしれない。でも、美咲も見捨てておけない。
考えながらも、浩二は走ることはやめなかった。それが美咲に対する裏切りになるとしても、今、自分の周りにいる生徒達だけでも助けたかった。
「先生。美咲ちゃん・・・。」
生徒はもう一度、浩二にそう告げた。
その声で、浩二の頭の中は真っ白になった。考えることも出来なくなるくらいに悩み続け、本当に頭の中は空っぽになっていた。そんな無意識の状況だったからだろう。浩二は周りにいる生徒達の事を無視して、一目散に教室に戻ろうとした。
突然の声に、浩二はすぐに瞼を開いた。
―――香田さん?
用務員の香田が、持っていた箒で思い切りニコルをぶん殴っていた。
「近藤先生。早く、生徒を。」
その声をきっかけに、浩二の足は素早く教室の中に向かった。しかし、教室の中には、もうほとんど生徒はいなかった。何がどうなったのか、浩二は気にする暇すらなかった。今はただ、ここにいる生徒達を助けなければ、その気持ちだけだった。
「みんな、先生について来なさいっ。」
大声で叫んだ。生徒達は一斉に立ち上がり浩二の後を追うように走りはじめた。
走りはじめてすぐに、ひとりの生徒が口を開いた。
「先生。美咲ちゃんがいない・・・。きっと、まだ教室にいるよ。」
少ないとはいえ、浩二の周りには何人もの生徒がいた。中にはけがをしているものもいた。そんな状況の中、教室に戻るのは得策とは思えなかった。
―――どうする?この子達を危険な目に遭わせるかもしれない。でも、美咲も見捨てておけない。
考えながらも、浩二は走ることはやめなかった。それが美咲に対する裏切りになるとしても、今、自分の周りにいる生徒達だけでも助けたかった。
「先生。美咲ちゃん・・・。」
生徒はもう一度、浩二にそう告げた。
その声で、浩二の頭の中は真っ白になった。考えることも出来なくなるくらいに悩み続け、本当に頭の中は空っぽになっていた。そんな無意識の状況だったからだろう。浩二は周りにいる生徒達の事を無視して、一目散に教室に戻ろうとした。