ニコル

　　カタカタ、カタカタ・・・。

　浩二の声をかき消すくらいに激しい音が聞こえてきた。
　振り向くと浩二の後ろには無数のニコル達がいた。
　浩二の顔は一瞬にして真っ青になった。そして、四つんばいになりながらも、給食準備室に向かって走り出した。
　「近藤先生っ。」
　香田が美咲に襲いかかったニコル達を振り払いながら、救いの手を差し伸べた。香田の手を掴み、やっと立ち上がる事が出来た浩二は全ての力を振り絞り走った。走りまくった。
　一度、美咲が襲われた場所を横目で見た。
　―――美咲。無事でいてくれ。
　そう思って見たものの、そんな事はあり得ない事はわかっていた。それくらいに、浩二の目の前で起きた事実は衝撃的なものだった。予想通り、美咲のいなくなった廊下を駆け抜け、給食準備室に転がり込んだ。