ニコル
 リポーターの言う通り、警察関係者は対応に苦慮していた。
 「どうしますか?山口さん。さっきから、学校に電話していますが、いっこうに電話に出る気配はありません。」
 「先生達の携帯はどうだ?」
 この春に刑事になったばかりの長瀬とベテラン刑事である山口の表情は曇っていた。
 「携帯も同様ですね。呼び出し音がなるものはありますが、誰もとる気配はありません。」
 「とりあえず、かけ続けろ。それから、生徒の保護者達に連絡をとって、生徒の携帯番号を調べろ。最近は小学生でも携帯を持っているなんて、生意気な時代になったもんだからな。」
 長瀬は何台も止まっているパトカーに向かって走り出した。
 「あとな・・・。」
 そう山口が言いかけると、長瀬は大急ぎで引き返してきた。
 「な、なんですか?」
 息切れをしながら聞き返してきた。
 ―――ったく。最近の若いもんは体力ねえなぁ・・・。
 少し呆れながら山口は続けた。
 「科捜研にも連絡しておけや。もしかしたら、毒ガスとかの類かもしれねえからな。安全ってわからなきゃ、危なっかしくて校内を調べるさせる事も出来やしねえからな。」
 長瀬は息を整える間もなく、もう一度、パトカーの方へと走り出した。
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