キミのコドウがきこえる。
部屋に続く戸を開けて、一段高くなった部屋の中に腰を下ろしスリッパを脱ぐ。
脱いだスリッパを、まるで他人の家に来たみたいに行儀よく向きを変えて並べて部屋に入った。
「ほら、とりあえずゆっくりしろよ」
仁成兄ちゃんが、部屋の真ん中にある丸いちゃぶ台の横に座布団を置いてくれた。
「ありがと」
私は、出してもらった座布団の上にふぅーっと息を落としてから足を長めて座った。
仁成兄ちゃんは、「ほらよ」と言って、コップに冷蔵庫から出した冷えた麦茶を出すと、白い調理服に着替え店に行ってしまった。
お店は、丁度昼時で混んで来たらしく戸の向こうからはフライパンとお玉がぶつかるカンカンという音や、お客さんと笑い上戸の母親の楽しそうな笑い声が聞こえた。
私はお茶を飲み終えると、ごろりと寝転んで天井を仰いだ。
さっき眠ったのにまだ眠いや……。
私はまた、うつらうつらと夢の世界に旅立とうとしていた。
『……ナル……』
私を呼ぶ声が聞こえる。
瞑っていた目をゆっくり開けると、ふんわりと良い香りがした。
「ナル、一緒にご飯食べない?」
良い香りとともに、私を呼ぶ声が耳元でとてもクリアに聞こえた。
私はびっくりして、声の方に顔を向けた。