キミのコドウがきこえる。
「初めまして。山本成子と申します」
「はい。知ってます」
井上さんは、私を見て子どものような邪気のない笑顔を向けると、箸いっぱいに持ったあつあつのご飯をためらいもなく一口でパクリと食べた。
「さっき私のことナルって呼びましたよね?私のこと知ってるんですか?」
井上さんは、ご飯をもぐもぐ噛みながらこくりと頷いた。
「僕、両親が離婚してて、前の苗字は佐々木と言います。佐々木翔太の時に会ったことがあると思いますよ」
井上さんは、そう言って私の前に手のひらを向け差し出した。
そしてもう片方の手で私の右手を掴むと、自分の手の平に重ねた。
「今は、僕の方が大きいね、ナル」
「……しょう、た?」
「そう、翔太」
重なった手から翔太の顔に視線を戻した途端、私の遠い日の記憶が蘇ってきた。
急にドキンドキンと心臓がうるさく鳴り始めた。
「あのっ……髪の毛、変わらない、ね?」
「17年ぶりに会って、それ!?」
翔太が箸を置いて、ハハハっと笑って自分の手と重ねていた私の手をぎゅっと握った。