キミのコドウがきこえる。
episode3
私と翔太が出会ったのは17年前。
小学校6年生の時、一つしかない6年生のクラスに中途半端な春が終わりそうな時期に転校してきたのが翔太だった。
翔太はとっても背が小さくてはじめは一番前の席にする予定だったのだけれど、「俺、目がいいので後ろの席がいいです。前だと逆に黒板が見にくいので」と言って、当時クラスの女子の中で一番背が大きくて、ずっと一番後ろの席だった私の隣の席になった。
私の町の土地柄、このように自分の意見を、しかも目上である先生にはっきり言うような人はあまり見たことがなかったので、最初は翔太のことをなんだか怖いなと思っていた。
「ナル!」
翔太は近くの家に住んでいたこともあり、なぜか私に懐いてきて、いつも私の後を従順な犬みたいにくっついてきた。
私は、「親分と子分みたい」と周りの男子たちから冷やかされるのが嫌で一緒にいるのをためらったのだけれど、翔太はお構いなしだった。
翔太は私の家に来ては私と一緒に宿題やゲームをして夕食まで食べていった。
夕食を食べ終わったころに翔太のお父さんがいつも迎えに来て、「いつもすみません」と言って、日替わり定食を食べて帰っていく。
「たまには男の子たちと遊びたいとか思わないの?」
「思わない。ナルといる方が楽しいもん」
「そう?サッカーしたいって思わないの?」
「俺は、ナルと何かしてる方がいい」
なぜこんなにも好かれたものか全く分からないが、こんなにも私を大切に思ってくれる友達がいるということが、なんだかこそばゆくて嬉しかった。