キミのコドウがきこえる。
じゃんけんで勝ち残ったのは、私と翔太だった。
私と翔太に決まった瞬間、周りの人たちから「お似合いの二人だな」とかずいぶん冷やかされたけれど、私と翔太はお構いなしだった。
それよりも学年の代表として、伝統の大太鼓を叩けることが嬉しかった。
決まったその日は、二人で神社に行って、神社の隣に建てられていた大太鼓の保管倉庫に行って直接大太鼓を見に行った。
名前だけは、『大太鼓記念館』という格好いい響きだが、実際に入ってみると保管倉庫の中はほこりまみれだ。
2年生の時の勉強の一環でこの『大太鼓記念館』に来た時に見た大太鼓の印象は、ただただほこりにまみれた大きい太鼓だったけれど、いざ叩くことになってから見るその大太鼓はとても立派で、天窓から差す太陽の光でさらに神々しく見えたのを今でも覚えている。
大太鼓を叩くことになったことを、神社の神主さんに伝えたら、「ばちを握ってみるかい?」と言われ、ばちを持たせてくれた。
太鼓の革の長さが2メートル近くもある大太鼓のばちだから、とっても大きくて、握るのがやっとだった。
私よりも手が小さい翔太は、私よりも握るのが大変そうだった。
「ナルくらい手が大きかったら、余裕で握れるのに」
と、翔太は悔しそうにしていた。
お守りを見ながら、そんな昔の思い出を今でも鮮明に覚えていることに驚いた。
他の記憶は、あいまいなところがあるのに、あの頃の……翔太と過ごしたほんの数か月だけは、今でもはっきりと覚えている。