キミのコドウがきこえる。

私は、スマホにカタカナで登録していた『イノウエショウタ』を『井上翔太』に替えた。

お守りをピンク色の封筒の中に戻し、いつも外に出るときに持ち歩く小さな黄色のバックの内ポケットにしまったと同時に、



「おーい、成子。ちょっと下に降りてきてくれるか?」



と、私を呼ぶ仁成兄ちゃんの声が聞こえた。

私は黄色のバックを部屋の勉強机の上に置いて、扉を開け階段を駆け下りた。


居間の扉を開けると、そこには険しい表情でちゃぶ台の近くに座布団も敷かずにあぐらをかいて腕組みをしているお父さんがいた。

お父さんは私を見るなり、



「おい。会社倒産したなんて聞いてないぞ!」



と、私を怒鳴った。

厨房に繋がるドアの隙間から仁成兄ちゃんが心配そうに私を見つめて、「ごめん」と口の形だけで謝った。

まあ結局いつかはばれる話だったんだし……と、諦めてお父さんに向き合うようにしてしぶしぶと座った。



「言うタイミング逃してさ……」



「タイミングとかそういう問題じゃないだろ!こんな大事なこと」



お父さんは真っすぐに私を見て、突き刺さるような大きな声で私に話しかけるが、私はその思いを受け止めることが出来ず、お父さんを直視することが出来なかった。


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