キミのコドウがきこえる。
私はお父さんが苦手だ。
普段はあまり話さないくせに、こうして私が失敗した時や間違いそうになる時なんかは、鬼のように怒る。
「大事なことって言っても、私はもう成人しているし、自分でなんとか出来るよ」
「心配しているのになんだ!その態度は!」
お父さんは目の前にあったちゃぶ台が壊れてしまうんじゃないかというくらい強い力で思い切り叩いた。
私の肩はその音にびっくりしてきゅっと縮こまり、目は大きく見開いた。
「おい、親父!そんな怒らなくてもいいじゃん!成子だって別に内緒にしようとしてたわけじゃないんだし。心配かけたくなかったんだよ。な?そうだろ、成子」
その様子に見かねた仁成兄ちゃんが、厨房へと続く扉から上半身だけを乗り出し、私とお父さんの会話に割り込んだ。
「お前は黙って、夕方からの仕込みしてろ!」
火に油だった。
お父さんの怒りは、仁成兄ちゃんの一言でもっと大きくなってしまった。
こういうところは、仁成兄ちゃんは不器用だ。
長男っていう負い目からか、ついついこうして助けようとしてくれるのはありがたいけど、こうなると余計話がこじれてしまうのは明らかだ。
「仁成兄ちゃん、いいから!」
私は上半身を乗り出した仁成兄ちゃんを両手で厨房へと追いやると、扉を閉めてまたお父さんと向き合った。