キミのコドウがきこえる。
episode1
「成子先輩、今日の合コンどうします?女子が一人足りなくて…まだフリーですよね?」
会社の後輩の愛菜(まな)がロッカーの鏡で化粧を直しながら聞く。
「んー…しばらくはいいかなって」
「そうですか?まあもし気が変わったら連絡下さいね!じゃあ、お先に失礼します」
「はあい。飲みすぎないようにね、お疲れ」
愛菜は、ひらひらと可愛らしく手を振ってロッカールームから出て行った。
ドアの向こうから聞こえる愛菜の足音は、パタパタっと弾むように消えていった。
「なんだかなー…」
前の私ならすぐ飛びついた合コンも、今はそんなに魅力的に感じない。
誰もいなくなったロッカールームで全身鏡を見ながら、ふうと大きく息を吐き、ショルダーバックを肩にかけ帰路につく。
いつもと同じ帰り道。
都会での社会生活も7年目。
一人の時もあれば、二人の時もあって。
生活に困らないほどのお給料はもらえてて。
それなりに貯金もあって。
楽しく恋して自由にやれたらそれでいいなって思ってた。
アパートの近くのスーパーで、ちょっとしたお惣菜と発泡酒を買って。
食べて飲んで、お風呂に入って、ぐっすり眠って。
そしてまたいつもと変わらない日常が始まり、会社に出社。
その繰り返し……のはずだった。
「え……!」