キミのコドウがきこえる。
「……お姉ちゃんが言ってる井上翔太って……この人で間違いない?」
成美が見せてくれたスマホの画面にいたのは、制服姿の成美と眩しいくらいの笑顔でにっこり微笑んだスーツ姿の翔太だった。
「うん。そうそう。知ってるの?」
「知ってるもなにも……今一緒に仕事してる」
成美はなぜだか急に不機嫌になり、ふうとため息をつきながら画面が見えないようにスマホを布団の上に置いた。
「仕事って?」
「お姉ちゃんには、関係ないもん」
成美はそれだけ言うとベッドから立ち上がり、通学バッグを床から乱暴にとると足早に部屋から出て行った。
「何で急に怒ってるんだろう……?」
私は、成美が怒っている理由が分からなかった。
***
その日の夕食は、久しぶりのお母さんの手料理だっていうのに、全然美味しく食べることが出来なかった。
お父さんと成美は不機嫌そうに夕食を黙々と食べ続け、能天気なお母さんを除いて、私と仁成兄ちゃんと仁成兄ちゃんのお嫁さんの響子ちゃんは、二人の様子を注意深く見守りながら食べていた。
仁成兄ちゃんと響子ちゃんはどうかは分からないが、私は味を感じる余裕もなかった。
「帰ってからそうそう喧嘩したんだって?お父さんと」
響子ちゃんが食べ終わった食器を洗いながら、食器を拭いている私に尋ねてきた。