キミのコドウがきこえる。
「うん……いつものお父さんがキレちゃったパターンだよ」
「……そっかあ……」
響子ちゃんは困ったように笑いながら、お皿についていた泡を洗い流していた蛇口から出る水を止めると、水をピッピと切ってお皿を水切り籠の中に入れた。
「もう少しお父さんが温厚だったら、こんなことにはならないと思うんだよね」
響子ちゃんはその話を聞きながら、うんうんと頷いてくれた。
「響子ちゃんはいいよね。お父さんのお気に入りだから怒られたことないでしょ?」
「まあ、確かに怒られたことないかな。私は逆に怒られてみたいけどな」
響子ちゃんはそう言うと、ハハハと笑って私が拭いた食器を、食器棚にしまい始めた。
「あ、それと一緒に気になってたんだけど、お義父さんの機嫌悪いのは分かるとして、成美ちゃんも機嫌悪くなかった?」
「やっぱり、響子ちゃんもそう思う?私もなんであんなに機嫌悪くなったのかはよく分からないんだけど……」
「そうなんだあ。ま、恋する乙女は情緒不安定だからねえ」
「え!?恋する乙女って?成美のこと?」
「うん。そうそう。最近好きな人出来たみたいよ」
「そうなんだ……二次元に恋するタイプの成美が、三次元に恋するなんて初めてのことじゃない?」