キミのコドウがきこえる。
そしてもちろん、翔太と私の大切な思い出の神社もそのままだった。
鳥居の奥に見える大太鼓記念館は、以前よりも壁の色がくすんで見えた。
ツキンと心にトゲがささったような気がした。
私はそこから目を逸らし、足早にその場を立ち去った。
時刻通りに『花竜』につくと、そこには翔太がすでにいて「おーい!ナル!」と人懐っこい笑顔を向けて両手を頭の上でぶんぶん振っていた。
「仕事今終わってきたの?」
そう聞くと、翔太は、「うん。やることが結構あってさ」と言ってネクタイを外すとくるくるっと丸めて背中に背負っていたリュックの中に閉まった。
「じゃあ、入ろうか」
翔太は、そう言ってお店の引き戸を開けてくれて「どうぞ」と言って、私を先にお店の中にエスコートしてくれた。
しばらく会わない間にすっかり大人の対応が出来るようになった翔太に、不思議な違和感を感じながらも、男の人に優しくしてもらったからか、私の心臓は静かに高鳴っていた。
店内に入ると、カウンターの中から「いらっしゃいませ!」と元気よく、スキンヘッドの中年くらいのおじさんが優しく迎え入れてくれた。
「竜(たつ)さん。俺、とりあえずビールお願い。あ、あと盛り合わせ。ナルは飲み物何にする?」
「あ、私もビールで」
「じゃあ、ビール二つと……盛り合わせは塩とタレどっちにする?」