キミのコドウがきこえる。
「俺ら、昔西村さんに太鼓教わったんだけど、覚えてない?」
「えっ……」
私は翔太の言葉に驚いて、西村さんと呼ばれた方をまじまじと見た。
「覚えてないかもね。頭、こんなに薄くなっちゃったし、メタボだし」
西村さんは、ガハハと思い切りの良い笑い方で笑うと、私に手を差し伸べて握手を求めた。
「そうか。彼女のこと口説き落としたのか」
「口説き落としたというか……まあ、そんなところです。俺の夢に無理やり付き合わせたようなものだけど」
翔太は、そういう風に言ったけれど無理やりなんて思っていなかった私は、「叩きたいと思って」と、翔太の言葉を遮るようにして言うと、西村さんの手をぎゅっと握った。
「和ちゃんの娘なんだもんな。血は争えないよな」
西村さんは、ぎゅっと握った私の手をさらに両手で包むと、「がんばれよ」と言って私の手に力を注ぎこむようにさらに強く握った。
「ということで、俺と成子さんで一緒に叩くことになりました。改めまして夏の祭りまで、ご指導よろしくお願いします」
翔太は私の隣で深く頭を下げた。私も西村さんから手を離すと、翔太と同じくらい頭を下げた。
「こちらこそ。また一緒に太鼓を叩けて嬉しいよ。叩くために作られた太鼓だ。こうして叩いてもらえたら嬉しいだろうよ」
そう言って私たちの目の前から西村さんが体をずらすと、西村さんの体があった場所から部屋の奥に飾ってある大太鼓が見えた。