キミのコドウがきこえる。
「今日はメンテナンスしてないから叩けないけど、来週からは、記念館が閉館した時間だったら叩きにきていいから」
西村さんはそういうと、部屋の中にある受付席の机の上から太鼓のばちを取り上げて、翔太に渡した。
「翔太君は、バチ持ってないだろ?これメンテナンスしておいたから」
「ありがとうございます。バチにもメンテナンスってあるんですね」
「バチの先端をサンドペーパーで整えておくと、太鼓の革への負担が少なくなるんだ」
「へえ。勉強になります」
翔太はそう言って太鼓のばちを両手に握りしめると、ぎゅっと握って太鼓を叩く真似をした。
「成子さんは……」
そう言って西村さんは、私の方をちらりと見ると、「お父さんのバチを使ったらいいんじゃない?」と、私にとっては苦行とも言えそうな提案をしてきた。
「父の……ですか……」
答えを言えずにいた私の背中を翔太がポンと叩き、「俺も一緒に頼んでみるから。せっかくだしお父さんの使ったらいいじゃん」と言葉をかけてくれた。
「ちょっとずつでいいから、ナルが泣かないようにしていこうよ。俺、ナル泣いてるの見たくないし」
「翔太……うん……ありがとう……」
翔太の後押しもあり、私はお父さんに太鼓のバチを借りられるか聞くことになった。