キミのコドウがきこえる。
episode6
久しぶりの音羽町民として目覚めた朝。
カーテンを開けるとまだ薄暗く、こんなに早く起きるのなんて高校生ぶりだと思った。
トレーニングウエアに着替え髪を後ろで軽く結わえて階段を降りる。
下の居間にはまだ誰もいなくて、台所から炊飯器がご飯を炊いている音が聞こえた。
外に出て軽くストレッチをして、まだ薄暗い音羽の町を走る。
アスファルトをリズムよく踏む音と、自分の呼吸のリズムが心地よくしんとした町に響く。
けれど普段の運動不足がたたってか、そのリズムは徐々にゆっくりになってしまう。
家から二キロくらい離れた大太鼓記念館に到着するころには、ランニングというよりもウオーキングじゃないかというスピードにまで落ちていた。
ふらふらになりながら、大大吾記念館の隣にある神社の手前の手水場に行き手を洗い口をゆすいだ。
「本当は飲んじゃいけないだろうけれど……神様ごめんなさい!ちょっとだけ飲ませてください」と、手を合わせて拝みお皿のように丸めた左手にひしゃくから水を落とすと、それを口に含んで飲み込んだ。
明日からは水も持ってこなきゃなと思いつつも手水場の水があまりにも冷たくて美味しかったものだから、そんなことするのは惜しいなと思ってしまった。