キミのコドウがきこえる。
頬には、フローリングの隙間の型がついていた。
どのくらい寝ていたのだろう。
リビングに続く扉のすりガラスの向こうから、遮光カーテンから漏れ出す光がうっすら見えた。
「やばっ!今何時!?」
慌てて腕時計を見ると、もうとっくに出社時間は過ぎていた。
起き上がり、洗面所で服を脱ごうとしてハッとする。
「そっか……会社潰れたんだった」
のろのろとリビングに入り、ソファーに体を投げ出した。
「これからどうするんだ、私」
はぁとため息をついて目を閉じると、愛菜の眩しい笑顔が浮かぶ。
7年……。
私は、いったい何をしてきたんだろう。
やりたいことがなくて、地元を離れたはずなのに。
結局やりたいものなんて、何にも見つからなかった。
ピリリリ…ピリリリ…
ぽっかりとした心に電話の音が入り込む。
スプリングコートのポケットの中からスマホを取り出して画面を見てみると、見知らぬ携帯番号が表示されていた。
「……もしもし?」